「おむかいのやっちゃん」創作記録最終回

絵本創作

 さて、文太とブンタとやっちゃんが空を見上げて見たUFOの話だ。このシーンは、僕の心の中に今も残っている不思議な記憶だ。当時は、テレビでUFOや宇宙人をはじめ、未確認生物等の特集がよくあった時代だろう。もう今にもその正体が暴かれる?!という寸前で放送が終わり、なんだか不完全燃焼な気分を抱えてしまう。そして、また新たな疑惑が生まれて、次の番組へ誘うような演出が頻繁に行われていたように思う。それでもやっぱりテレビが面白い時代だった。そんな環境の中で育ってきたからだろうか。あるいは、幼い頃によくあるように、自分の記憶を都合のいいようにアップデートさせて、あたかも本当の記憶のようにしてしまったのだろうか。はたまた、夢で見たことを実体験のように記憶させてしまったのだろうか。いずれにしても、夜、家の前で巨大なオレンジ色の光がゆっくりと移動していくシーンが記憶の中のワンシーンとして目に浮かんでくるのだ。わかっている。そんなことがあるわけない。そんなことが起こったなら大ニュースだ。でも、絵本の中の文太、つまり自分を投影させたキャラクターになら体験させてもいいではないか。そこにやっちゃんとブンタがいてもいいではないか。と考えて創ったページなのだ。子どもにしか見えないUFO。なんだかわくわくするのは僕だけか。読者の中には気づいている人もいるが、(子ども達は何度も読むうちに気づき始めたり、だれかが発見して教え合ったり)前回書いたブラウン管の大きなテレビの中には、UFOと宇宙人が映し出され、鏡文字であるメッセージが書かれているのだ。

 そうこうしているうちに、この創作記録も終盤だ。UFO事件からしばらくして文太は引っ越してやっちゃんとブンタとお別れする。そして、最後、大人になった文太が当時をふりかえってやっちゃんとブンタに感謝の気持ちを伝えるテキストで幕を閉じるのだ。

 文太、つまり僕は、実際のところ小学校2年生で転校している。当時の僕にとっては本当にこの世の終わりかというくらいの大事件だった。何十年も経った今、その転校自体ともすれば忘れてしまうくらいの出来事だ。隣の学区に転校しただけだ。もちろん、それで友達関係も変わっただろうしきっと人生の中ではそれなりの出来事だっただろう。

 僕が文太くらいの年齢だった頃、今から40年以上前になるが、決して裕福ではなかった。いや、どちらかというと生活自体は楽ではなかったはずだ。でも、様々な環境、例えば周りの自然であったり、幼馴染であったり、近所の厳しくもあり温かい大人達であったり・・・。昔は良かった・・・と嘆くつもりはまったくないが、もしかしたら、子どもが今よりも子どもらしく輝ける時代だったのかもしれないとは思う。さあ、そろそろまとめよう。「おむかいのやっちゃん」は、絵本作品としては稚拙なものかもしれない。が、僕にとっては幼い頃の大切な思い出を織り込んだ大切な作品なのだ。ということで、興味をもって頂けるのなら手にとってみてください。「おむかいのやっちゃん」創作記録おしまい。

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